賢人(けんじん)の残した「百薬(ひゃくやく)の種」

ボクの名は「タカ」。ここ高岡で前田利長の名刀「大天下（おおてんか）」を発見してから、宝物を探すことを目的としたワクワク探偵団をつくった小学5年生さ。昨年も無事に「賢者の石」を見つけることができたんだ。
あれから、さらに高岡にまつわる伝説を調べてみたところ、ある賢人の残した「百薬の種」という秘宝が、ここ高岡に存在していることがわかったよ。

７４６年、まだ２９歳の大伴家持が越中国の国（こく）守（しゅ）としてやって来た。5年後に都に戻るまで、この地をこよなく愛し、詩情あふれる名歌を残した。歌人としてはもちろん日本でもっとも古い和歌集「万葉集（まんようしゅう）」を編集したうちの一人といわれていて、歴史にその名を残しているよ。

家持が高岡の地で詠（よ）んだ和歌は223首あるけれど、その中でもっとも注目すべき1首があるんだ。

もののふの八十（やそ）をとめらが汲（く）みまがふ　寺井（てらゐ）の上の堅（かた）香子（かご）の花
（たくさんの少女たちが入り乱れて水を汲んでいる寺井のほとりに群がり咲いているカタカゴの花）

一見、おとめの美しさや花の美しさをたたえた情景（じょうけい）が詠まれているようだけど、実はこの歌に「百薬の種」の秘密が隠されているといわれているんだ。この時代、「堅香子の花」について書かれた和歌は、これ1つしかなく、この花については研究者たちの間でも長年の謎だったんだ。
そんな中、先日、家持に支えていた橘（たちばな）正長（まさなが）が家持から授けられた太刀（たち）をまつったと言われている藤波神社から、家持の残した書物が見つかった。その書物によると、高岡の地には古来より、「万病（まんびょう）に効く種」を持つ不思議な花が咲いていたが、家持が国守を務めた時代に乱獲がはじまり、その数が激減してしまった。そのため、家持はその花の種、通称「百薬の種」を人に見つからない場所に隠したらしい。そして、この「百薬の種」を正しく使うことのできる後世の人に向け、その在りかを謎にして残すと書かれていた。家持の和歌に出てくる「堅香子の花」は、この幻の花のことを示していたんだ。

その情報を聞きつけたボクは、ワクワク探偵団の一員であるホタルちゃんといっしょに調べることにしたんだけど、探すには協力してくれる人がもっと必要なんだ。１３００年のときを越えてよみがえる万葉集に隠された高岡の秘宝。キミもいっしょに探そうよ！
このストーリーはフィクションです。